怒りや不安、つまり緊張時の脳内のメカニズムを知って対処する方法
世の中にはとりわけ怒りっぽい人や攻撃性の高い人と、逆に臆病で不安や緊張になって焦る人という対極的な人たちが存在します。この人たちは一見して正反対の性格ですが、脳内で起きている現象は実は同じです。つまり攻撃性の高い人は実は臆病の裏返しであり、臆病な性格もまた攻撃性の裏返しでもあるのです。
怒っても不安で緊張して焦っても脳内では同じ現象が起きている
人の平時の心拍数はだいたい椅子に着席した状態で85と言われています(安静にしている時は74、寝ているときは70程度ともっと低いです)。しかし怒ることや不安になることを我慢している状態では、前頭葉が偏桃体を抑制していることが脳のポトグラフを見るとわかります。怒りや不安を我慢している時は脳の前頭葉が活発になって偏桃体を抑えているのです。これは怒りっぽい人でも臆病な人でも脳内では同じ現象が起きているのです。そして我慢の限界に達し爆発する瞬間、脳内ではどのような変化が生じているのでしょうか?ポトグラフで見てみると怒りが爆発した瞬間、前頭葉の活発化が終了してきれいさっぱり頭のてっぺんのほうにエネルギーが薄く散っていきました。「怒り爆発!」という言葉通りまさに前頭葉のエネルギーが上方向に爆発した瞬間が画像に鮮明に表されているのです(笑)不安や緊張も同じです。怒りや不安を我慢していると、不快なことやつらいことを我慢していると、前頭葉がチリチリと熱く感じることがありませんか?あれはまさにエネルギーが限界まで溜まっているのです。前頭葉が偏桃体を抑制している時の心拍数は100近いです。それが爆発すると心拍数は140くらいに急上昇して怒りまたは逃走の反応が生じるのです。そして怒りや不安を我慢して交感神経が活発になった結果、感情が爆発すると血小板にトゲが生じて血管が詰まって脳梗塞や脳出血、心筋梗塞に繋がり血管が収縮して筋肉が緊張します。負の感情がうずまいていると経皮水分蒸発量が多くなりお肌も乾いて健康にもよくありません。血流も悪くなりますから免疫も下がります。
つまり、度を過ぎた怒りや不安という緊張は健康によくないのです。適度であれば認知症の予防にもなると言われているのですが・・・爆発すると忘れっぽくなると思いませんか?
アドレナリンの役割と問題
アドレナリンは闘争か逃走の時に分泌されるホルモンで全力を出すときに分泌され流血の事態に備えるために血を固まりやすくするのです。つまり戦いで傷ついた時に血を固まりやすくする機能です。そして戦う時や逃げる場合は末梢神経が収縮して筋肉への血流が増加して筋力がアップして早く走れるようになるのです。まさに命がけの時にアドレナリンが大量放出されるわけです。私たちのご先祖様は太古からアドレナリンに何度となく助けられてきました。しかし現代では物理的に戦い逃げる機械が滅多にありません。
ほかの動物は前頭葉が小さく偏桃体、つまり本能だけで反応しているのです。社会性のある動物は前頭葉が発達しています。
不安や怒り(イライラ)を解消する方法
不安になるようなことを考えて緊張してしまった時や怒りでイライラした時に緊張をほぐすいくつかの方法をご紹介したいと思います。
カタルシス、イライラ(怒りと不安という緊張)解消グッズ
アドレナリンが高まった時は安全に解消したいですね。現代では戦いたいのに戦うと違法になりますし、エレベーターや車内や教室、職場などでは逃げたいのに逃げられない場面ですからどうにかして爆発する前に鎮めたいのが人情です。
世の中にはいくつかのイライラ解消グッズがあります。
間違った怒りと不安の解消法
心理学的に間違っている怒りや不安の解消法があります。
- 失恋した時に相手のことを思いながら歌う
- 怒った相手のことを思いながらプチプチなど解消グッズを使う
- ネットに溺れる
- 酒に溺れる
- 対戦型ビデオゲーム
- ネットでの心無い書き込み
カタルシスを得られる正しい怒りと不安の解消法
カタルシス、つまりスッキリした感覚が得られる怒りと不安の解消法を紹介したいと思います。ある実験では縛られたラットに箸をかじらせたものとそうでもないもののストレスを比べると、箸を噛んでいたラットは50分後にストレスが50%以上低減したという実験結果がありました。怒りや不安の感情はすぐに発散させることが効果的なのです。
つまり、爪かみは人間のストレス解消法だったのです。そして飲酒やたばこ、寝る(何もしない)という行為はまさにストレスを抱えたままストレスに縛られた状態であるのでストレス解消にはならないのです。不安や緊張のまま眠ってしまうと記憶が定着してしまうのです。
怒りや不安というストレスを解消するには、寝る前までに運動したり考えを改めるなどして発散しましょう。ガムを噛むことも有効です。人に気持ちを話すことも、思いを手放すことになりますので聞いてくれる人に話しましょう。
相談に乗ってくれる人と相談に乗ってくれない家族
小さい頃から親が自分の相談に乗ってくれない家庭で育った人はストレスに弱いといえましょう。私の家庭でもそうでしたので、私はいつの間にか臆病かつ怒りっぽい人間に育ってしまい緊張しやすい性格となり考えを改めるまでに精神的に随分と苦労しました。ですので理解してくれる相談相手はいたほうが断然良いのです。理解してくれない人に話すと聞き役への怒りがこみ上げてきますので逆効果です。
人の話を受容と共感と支持をもって傾聴してくれる人、つまりカウンセラーのような人が怒りや不安を解消するためには重要なキーマンとなってきます。今はお金を払えば真剣に聴いてくれる専門家が多少はいますので、相談することがストレス解消への早道です。
心が狭い人は悩みがあって相談を持ち掛けてきた人を冷たく突き放ちますのでそういった人とは親しく心まで与えて付き合わないようにしましょう。
繰り返し思い浮かべない
ストレスとなっている原因を何度も思い受けべては怒りや不安や緊張はおさまりません。つまり悩み事が解決せずに何度も反芻している、つまり反芻思考が起きているときはストレスが溜まっていきます。
呼吸や身体に注意を向け感情に気づきやすくする
怒りや不安という緊張が生じる瞬間、つまり反芻思考をしてる瞬間を自分できづいて整理整頓することです。寝る前にぐちゃぐちゃな感情を日記に書いて客観視するとストレスを軽減する効果があります。
よくある怒りや不安のポイント
自分の怒りと不安のポイントを良く知って考えを改めるなどして反応してアドレナリンを分泌しないようにしてみよう!特にアドレナリンが出て困る場面への対応が効果的!
- 悪口・嫌味を言われる
- 朝目が覚めた時
- 夜寝る前に出来事や心配事を思い出す
- 不快な気候
- 不快な環境
- 車の中(渋滞、疲労、逃げ出せない不安)
- 電車の中(混雑、粗相をすると恥をかきやすい場面、逃げ出せない不安)
- 教室や会議室などの閉鎖空間の中(粗相をすると恥をかきやすい場面)
- 憎い敵が同じ空間にいる場面
- 強い劣等感(容姿や知性への劣等感)
- 批判される立場(自己の未熟、悪事の隠ぺい)
- 逃走している立場(悪事からの逃走、義務からの逃走)
- 生理的な身体の状態(月経サイクル、精子のサイクル、加齢、病気)
- 反復作業(パソコンの閲覧・入力、工場での機械的作業、毎日同じ日常労働)による脳の疲労
- 身体的疲労
- 攻撃的または逃避的な性格と思考の遺伝・伝授
- 対戦ゲームや対戦スポーツのやり過ぎ
- 戦争や犯罪に遭遇
人がストレスを感じるポイントはだいたいはこんなところでしょう。このように私たちが日常を送って生きているだけでストレスを避けることはできません。一見平気そうに見える人も「我慢」しているか「鈍感」になって反応しないように努力しているだけなのです。ですから毎回同じストレスポイントに同じ反応(怒りや不安)をしていては身が持ちませんので、私たちは無意識のうちにいくつかのストレスポイントについては対応してアドレナリンを出さないように訓練されているのです。
疲れている時もイライラしたり不安になりやすい
疲れている時に怒りっぽくなったり神経質になるのは体がもっと動けるようにアドレナリンが放出されているのです。疲れている時の心拍数は大体90前後あると思います。この状態でストレスに反応してしまうとアドレナリンが出てさらに心拍数が上昇してしまい呼吸が乱れます。無理をしているとだんだん不快感が生じてイライラしてくるでしょう?あれは疲れているのに、無理してがんばれるように体がアドレナリンを出しているのです。ですからこの状態を続けることは困難でやがて爆発して気力が枯渇してしまうときがやってくるのです。前頭葉が偏桃体抑え続けると鬱になるということなんですよ。感情が慢性的に爆発すれば攻撃性人格障害あるいは不安神経症の状態になるというわけです。
一人のほうが気が楽の正体
若い頃は一人よりも群れていたほうが安心でした。あるいはひとりぼっちの生活が長いと人間関係の刺激に慣れない日々もあったでしょう。しかしどちらの方でもいったん大人になり精神的に自立してしまうとむしろ一人のほうが気がラクだと思えてくる時があります。あるいは家庭で妻や夫を演じている人々にも一人の時間がほしいと思うことが必ずあります。それはやっぱり「刺激に反応しない時間」を求めているのです。刺激の無い生活に慣れていると家族の団らんですら苦痛になります。ここはやっぱり他人からの刺激に慣れるという学習と経験が対人関係でのストレスに対応する最良の方法であるように思います。
ストレスが少ない人は自分の体に敏感で自己中心的で問題のある人も
私のようにストレスの限界まで粘るタイプは逆に鈍感でストレスに弱いと言えます。観察してみると、ストレスに強い人は無理をせずに脈拍が上がったら爆発したり立ち上がって行動や言葉を自分に都合の良い物に変えてストレスを避けています。つまり自分に正直で敏感で自己中心的な人ほどストレスに強い事が私の観察結果でわかっています。ストレスに弱いと思って悩んでいる人は心拍数の限界まで我慢していることがほとんどだと思います。大体脈拍が90近くになったらストレスが溜まっているのでストレスに強い人は回避行動をしています。ストレスに強い人の正体は我慢せずストレスを避けまくっているのです。これまでの説ではストレスに弱い人が鬱になったり神経症になったりしているということが当たり前のように言われてきました。しかし私が人を観察してわかった結論はストレスに強い人はストレスを避けるために行動や言動を変えている自分に敏感な人たちであると思います。例えば粗暴で差別的な言動をする人ほど高い地位にいてお金持ちでストレスが無いように見えます。明るく振る舞っている人は徹底してストレスになりそうなことを排除しています。逆に鬱になる人は自分の本能を徹底して抑えている人がほとんどのように見えます。つまりストレスから暴言や嘘などで逃げている人ほどストレスに強いのです。鬱や神経症気味の人が臆病者だという人もいますけど、健康な人のほうが我慢せずあれこれと不健康になりそうな事からずるい方法を使って逃げているのです。限界まで我慢しないことはストレスで体を壊さないようにするためには最も重要なことなのです。
緊張を乗り切るには理性を高めるしかない
人は皆、余計な事を考えては緊張して心拍数が上がってしまう生き物です。理想は何でも落ち着いて余裕たっぷりに対応したいところですが、お金も名誉も無く小心者で人生経験の浅い私たちはそうはいきません。身分の低い私たちにとって支配や抑圧というストレスは日常茶飯事のことです。そんな私たちがストレスを乗り切るには、理性しかありません。本能ではやり返してやりたい、その場から逃げたい、楽になりたいなどと思うから心拍数が上がり体が緊張してしまうのです。何度もそういう場面を繰り返していると、やがて学習する機会が訪れます。ああ、こんな場面、前にもあったなと。今まではドキドキしていた場面も年季が入れば考え方が変わって反応せずに済むことが可能です。仏教の瞑想とはまさに反応しない練習ですから、うってつけの修行です。怒りが湧いたり逃げ出したいなどと思っても反応せずに緊張しなければよいのです。いつもは火山が噴火するかのごとく我慢していた感情が溜まってしまうシチュエーションでも、理性で認識してわかるようになれば意外と平気になりますよ。